田山 湖雪|Koyuki Tayama
水くぐり
見聞や地勢、現象を観察しながら場所のサンプルを抽出する意識の領域。直感的に過去現在未来の差が曖昧になり、対峙する場所や風景から他の時代を想起する無意識の領域。私の写真はこの間を行き交っている。
現在の撮影エリア、静岡県内の瀬戸川流域は縄文時代から人が定住し現在まで変動を繰り返してきた。鎌倉期以前に決壊した名残が住宅地に現存し、古い瀬「瀬古(せこ)」として地名に。上流域では文献や逸話に水害の記録や教訓が残されている。
川の怖さを知りながらもなぜ寄り添うのか。人間の好奇心に興味があり、際をなぞるように川原と隣接する集落に足を運んでいった。直視できる産業や生活様式、伏流水といった視えない川の力が植物や人に影響し、風景を介して写真へ投影されていく。培われた野菜を食し、住民の記憶を聞き取りながら撮影する日々を過ごしていると自身もその力の一部になっていく気がした。
そんな折に砂利が蓄積し小山になった中洲と出会った。木々やツタに覆われ、自生した花々が咲く砂利山。頂上はぽっかりと空いていて、なにも無いのに神々しい。熊野や伊勢、三輪山など関西の自然崇拝地と同じ神聖なものが降りてくる不思議な場所であった。その時、名もなき中洲から川へ畏敬の念を抱いた先人の目と重なった。後日、近くの集落で行われる祭事を知るのだが、天井に結界をつくって神を呼ぶ「神降ろし」という所作があるので驚いた。
地勢を体現することは、土地で暮らす人々の生気を満たしていくだろう。
1987 | 静岡県生まれ 静岡在住 |
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2011 | 東京造形大学造形学部デザイン学科写真専攻卒業 三重のローカル誌「NAGI」の編集に携わる |
個展 | |
2015 | 「三重ワンダーランド」volvox 三重「三重ワンダーランド」M2gallery 東京 |
2012 | 「suraito coma」 三重 |
2011 | 「アリアドネの糸」トーテムポールフォトギャラリー 東京 |
グループ展 | |
2015 | 「STEP OUT! New Japanese Photographers IMA CONCEPT STORE 東京 |
2013 | 「影像2013」世田谷美術館区民ギャラリー 東京 |
2012 | 「suraito’GRバトン写真家リレー/リコーイメージングスクエア銀座 東京 |
写真集 | |
2015 | 「三重ワンダーランド」月兎舎 |
2013 | 「糸遊そそぎ」私家本 |